診療内容
耳鼻咽喉科は,耳,鼻,のどと,その周辺領域の病気を対象として診療を行います.
耳:滲出性中耳炎,急性中耳炎,慢性中耳炎,突発性難聴,老年性難聴,補聴器相談など
鼻:アレルギー性鼻炎(花粉症),急性/慢性副鼻腔炎,鼻茸,鼻中隔湾曲症,鼻腔腫瘍(良性)など
のど:急性扁桃炎,扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍,咽喉頭炎,声帯ポリープ,声帯結節,声帯麻痺,嚥下障害,睡眠時無呼吸症候群など
めまい,顔面神経麻痺,頸部腫瘤,唾液腺疾患,甲状腺疾患など
当科では次のような手術を行っています
耳:鼓室形成術(真珠腫性中耳炎,慢性中耳炎),内リンパ嚢開放術(メニエール病),アブミ骨手術(耳硬化症),鼓膜切開術,中耳換気チューブ留置術,鼓膜穿孔閉鎖術,耳瘻孔摘出術など
鼻:内視鏡下鼻副鼻腔手術,鼻中隔矯正術,下鼻甲介手術,後鼻神経切断術,鼻腔腫瘍摘出術など
のど:口蓋扁桃摘出術,軟口蓋形成術(睡眠時無呼吸症候群),喉頭微細手術(声帯ポリープ,声帯結節),声帯内コラーゲン注入術,披裂軟骨内転術,顎下腺摘出術(唾石症,顎下腺腫瘍),耳下腺腫瘍摘出術,甲状腺腫瘍摘出術,頸部腫瘤摘出術,気管切開術など
2023年4月,咽喉頭および鼻副鼻腔手術のスペシャリストである本庄 需(ほんじょう もとむ)医師が着任しました。2023年5月より,鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術を開始しております。当科では最先端の4K内視鏡システム,ナビゲーションシステムを導入し、手術を行っております。4K内視鏡を用いることで,術野は従来のハイビジョン内視鏡と比べて明るく鮮明となります。いち早く組織の状態を把握し,血管や神経等の細かい組織の識別が容易になることで,手術時間の短縮や合併症の発生率を低下させることができます。ナビゲーションシステムとは,患者さんのCT画像と手術で用いる機材をリンクさせ,車のナビゲーションのように手術中に鼻のどの辺を操作しているか,をリアルタイムで示してくれる画期的な装置です。これを用いることで目や脳に関わる合併症を生じるリスクが軽減され,安全な鼻副鼻腔手術を担保することができると考えます。
また,耳下腺や甲状腺の腫瘍に対する手術において,最新の神経刺激装置(NIM VITAL™(Medtronic社製))を用いて顔面神経や反回神経のモニタリングを行い,神経損傷のリスクが低減されるよう努めております。
上記に該当する疾患でお悩みの患者さんは是非とも当科へご相談ください。
診療実績
2023年4月から2024年3月までの耳鼻咽喉科入院患者数は396名でした(退院日基準)。手術目的のほか,急性期のめまい,突発性難聴,顔面神経麻痺,急性扁桃炎を中心とする咽喉頭領域の急性炎症の治療のための入院が多くなっています。最近では睡眠時無呼吸症候群に対する精密検査(PSG: ポリソムノグラフィー)および経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP)導入のための入院が増加してきています。
2023年4月から2024年3月までの手術室における手術症例数は135例(全身麻酔122例,局所麻酔13例)でした。外来診察室での小手術を含んだ総手術件数は306件であり,その内訳は下記の表の通りです。鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡下手術をはじめ,口蓋扁桃摘出術などの口腔・咽喉頭手術の件数が多くなっております。また,真珠腫性中耳炎・慢性中耳炎に対する鼓室形成術を8例に施行しました。以前よりも入院での耳科手術の症例数が減っていますが,その理由を次項に記載しております。
鼓膜穿孔閉鎖術について
注目すべき最新の治療として「鼓膜穿孔閉鎖術」と呼ばれる手術があります。慢性中耳炎に対して鼓膜穿孔を閉鎖する手術です。かつては鼓膜の穴をふさぐための移植材料として,耳介上方の皮膚を切開してこめかみの筋肉から「筋膜」と呼ばれる組織を採取する必要があり,多くの場合,3泊4日程度の入院で全身麻酔下に行っていました。現在は「ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(リティンパ)」という製剤を使う手術(鼓膜穿孔閉鎖術)により,局所麻酔による日帰り手術が可能となっており,患者さんの肉体的・経済的負担が大幅に軽減されています。当科では昨年度,この手術を8例施行し,良好な結果を得ています.
鼓膜穿孔閉鎖術 術前(左鼓膜) 鼓膜穿孔閉鎖術 術後
耳鼻咽喉科診療についての基本的な考え方
常勤医である小山内は日本めまい平衡医学会の専門会員であり,今後もめまい患者さんの診療に力を入れていきます。新しく常勤医として着任した本庄は,鼻副鼻腔および咽喉頭領域のスペシャリストで,今後,当該領域の手術を含む診療を積極的に行ってまいります。
日常の耳鼻咽喉科診療においては,生命に関わる疾患を見落とさないことを最重要課題と考えています。耳・鼻・のどの悪性腫瘍,脳血管障害によるめまい,咽喉頭の急性炎症に伴う気道狭窄,真珠腫性中耳炎(頭蓋内合併症を生ずるおそれのある中耳炎)などがこれに当たります。患者さんとご家族に対する説明に際しては,医学用語を極力わかりやすく言い換えること,難聴のある高齢の方でも聴き取りやすいように明瞭な話し方をすることを心がけています。以上のことからどうしても1人あたりの診療時間が長くなり,診察前の患者さんを長くお待たせすることになりがちです。待ち時間についてはいつも心苦しく感じているのですが,診療の質が最も重要であると考えています。